最終講義

弊学科名物,某 S 先生の最終講義があった.S 先生は,形式言語帰納推論の人,というようなイメージがあったのだが,それだけではなく,検索についても色々な研究をされていたらしい.というか,一番驚いたのは,倉田先生の弟子でもあるのね.有川先生の弟子ということは知っていたけども.数学基礎論みたいな古典的な CS の人たちの系譜も受け継いでいるということで,なんか意外に世間は狭いですねという感じ.

以下大雑把に感想.

  • 実験科学は基本的には極限同定だから,極限同定について考察することは意義があるだろうということで,なるほど.正例からの推論の話は,一年前聞いた時にはあまりピンとこなかったのだけど,今回きいてなんとなくだけれどもわかった気もする.正例からの帰納推論って,ある種の証明論のような気がするので,証明論の結果をもっと直接的に使えたりしないんだろうか.気になる.
  • 「AIは理由を説明できないというような風潮がムカつく」というのは全くその通りだと思う.S 先生とはおもっている方向がちょっと違うみたいだけど,私は「理由」なるものがなんなのかというのを形式化することは不可能なのではないか,そしてそれは人間の思考においても,明確な説明を与えることは難しいのではないかと考えているため.人間の推論というのはおびただしい数の前提とか直観の上に拠っているが,ある推論について,そういうものをすべて明示的に説明できなければ「推論の理由が示せていない」となるのであれば,それは AI だけじゃなくて人間だってそうだろう.たとえば,きんと文章すら読むことができない人間が大量にいるわけだけど,その大多数は特に問題もなく社会的動物の一員として幸せに暮らしているわけで.そういう人間の馬鹿さとその上に成り立つかしこさみたいなものをどうやって説明するのかという話だ.人間側の知性の全体像が全くわかっていない状態で AI と人間の違いみたいなのを強調することにどういう意味があるのだろうか.
  • いつもながら,帰納的な推論と演繹的な推論とアブダクションの例は微妙だと思う.というか,ことわざみたいな,非原子的な推論を,人間の推論を表す例として採用するのはどうなんだという気もする.と書きながら,原子的な推論ってなんだろうねという疑問が.まあ人間の認知的な構造って原子的な構造になっていない気もする.
  • 最近はまた検索について (学生と?) 研究されていたらしいが,帰納推論に比べれば結構工学的なことをやっている印象.よくわからんけど.(というかこのブログ記事書いている時点ですっぽり頭から抜け落ちている…
  • なんか場違いな感じの服装で行ってしまったな….もうちょいフォーマル目のものでいくべきだったかも.まあどうでもいいや.